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answer,answer -1



「答えは何でしょう?」
皮肉めいた符号は
はて 何の合図か




answer,answer -1




時に、昔話をお一つ。
昔昔、今では誰も知らないはずの大昔。
とある少女は言ったそうだ。
「私は全てを知ってるよ」
ならばと知らぬはずの問いを投げかけた狩人曰く、少女は全てを迷いもせずに答えたそうだ。
ならばとこれから訪れる災いを教えろと詰め寄ったお婆さん曰く、少女は一月後に起こった洪水を見事言い当てたそうだ。
しかし誰も信じない。しかし誰も、認めない。
はては少女こそが災いをもたらしたのだと大人達は言い、少女を深い沼へと落として殺したそうだ。
少女は「最初から分かっていたけど、やっぱり愚かな人達」と笑いながら、一人深い深い沼へ沈んでいったそうだ。


嗚呼、愚かしや。









頬杖の所為か、少し痛む肘をさする。凝った身体を解すようにうんと背伸びすると、急に眠気が襲ってきた。
欠伸で浮かんだ涙を拭いつつ、窓を見遣るともう空はすっかり暮れきっていた。

そろそろ帰らなければ口うるさい保護者はメールやら電話やらを必要以上に使用するだろう。軽い嫌がらせ以外の何物でもない。
何時もニヤニヤと締まりのない顔ばかりしていて忘れがちだが、自分の保護者は根っからの加虐性愛者だ。ああ、私のこれからの予定が嫌味混じりの説教で埋め尽くされる悲惨な未来へ変更される前に窮屈な家へ帰らねば。

心なしか痛む米神を労り、椅子の下に置いてあった鞄を取る。

心地よい静寂に包まれて佇む図書室に不承不承の体で別れを告げた。




「斎ちゃーんっ!」

大きな校門を潜った辺りで、どう考えても頭痛の種にしかなっていない人物からのお声が掛かる。
このまま無視して通り過ぎてしまおうか、と思ったが相手が悪かった。私の全身から発せられているはずの拒絶オーラを完璧に無視して、両手に花状態の級友が目の前に立ちはだかる。
細い道なので男女三名が横に並ばれては通ることなどできず。無駄な抗いとして「通行の邪魔」と呟くと、彼は黒曜石よりもいくらか薄い色彩の瞳を甘やかに細めた。
嫌な予感。

「ああ、じゃあ君達もう帰っていーよ、バイバイ」

先程まで爬虫類の様に絡みついていた香水臭い腕をいとも容易く振り払ったかと思うと、私の肩に右手を置く。

「俺、この子とデートするから」

ええええー、私達との約束だったでしょ、何でよ、と口々に抗議する“花”だった何やら顔にたくさんのものを塗りたくった彼女達は、飄々とした彼に焦ったのか、怒りの矛先を私に向けた。

容易に想定できた事ではあるが、何故無関係で潔白の身である私が謂われのない怒りを引き受けねばならないのだ。

「・・・、緑田 要嵐。何故私が彼女達に恨まれねばならないのだろうな?」

「あー、きっと斎ちゃんの美しさに嫉妬したんだよー、人気者だね、“翡翠葛の君”?」

「・・・お得意のご託は後にしろ。アンタが処理すべきことだろうが。さっさとキスでもハグでもして帰せ、この色情狂」

ああ、いけない。苛つくとどうにも言葉遣いが乱雑になって困る。だがくどい言い回しをしなくて済むのは楽でいい。
保護者の目がない場所では使うのもいいかもしれない、と思案しているとどうやら彼女達は納得して帰ってくれたらしい。
どんな方法を使ったのかは聞かないでおこう。興味などないしな。


「じゃあ、俺とデートしよっか?斎ちゃん」


どこかのお伽噺の道化師めいた彼は、ニヤリと補食種のような笑みで手を差し伸べた。









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