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確証のない約束か、
朧気に霞む台本か、
この手が真に欲しているものは果たして何か



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これが最後だ
きっと終わりだ
開けてしまえば簡単な答え

其処に希望がないなら、絶望だってあってはくれない
何も無い、深淵だ










あるいはそれが、絶望なのか。











「物語に終わりはないさ」
ソレは、さも愉快げにそう言った。
「君の知るそのシナリオは、永遠に続いていく」
クツリ、喉を鳴らし、人の絶望を誘うような、口調。
「君を縛り付けた役は、消えないしなくならない」
けれど歪んだそれは元はきっと愛だった。
「君は、死ねない」
屈折して何度も傷付いた愛に、私は笑った。


ごめんね。





死ぬことは私にとっての希望だった。
終わり無い苛みが終わるのではないかと、理解していながら試みる死。
痛みを伴えばそれが死を感じさせた。首を絞め、腹を裂き、頭をわり、
酷い死に方ならば本当の意味で死ねると思った。このまわりつづける魂が、消えると思った。
擦り切れ、老いた魂が救われると。

人生には期限はある。
魂のソレに、期限はない。


忘れることで救われ、また生きて、負った苦しみを忘れることでなくし、また生きて、繰り返す。


私は忘れることができない。
魂は記憶し続ける。
苦しみだけが積み上げられた崩壊寸前の塔。
そんなものを抱えて、正気でいられる方が異常だった。

普通ならば私はとうの昔に精神崩壊を引き起こしているはずの存在だ。

けれど役がそれを赦さない。
だから、ずっとこのまま死にもせずに生きもせずに、息していくだけだ。

それは例えば、錆付いた骨董品の並ぶ奥に置かれた、空っぽの人形に。
それは例えば、鍵のない鳥篭に閉じ込められた鳴けない鳥に。

似ていると思う。

置き去りにされた子供の心情が胸の内には何時も巣食い、いつか心はイレモノでしかなくなって

壊れてしまえば終われることを知っている癖に、無知なフリをして死に続けて

「きっと」

なんて縋るのも空しい絶望に囀りながら縋り付いて

呆気なく放された救いの手に、でもやっぱり力なく微笑むだろう?




愚か愚かと口から零れる嘲りの矛先は誰でもなく自分だってことに、気付いてないだろう。




うん、
もういいよ、わからないふり
うん、
もういいよ、しんだふり
うん、
もういいよ、いきてるふり
うん、
うん。


こくりと頷いて
かたりと閉じた









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応え 応え
愚か者共よ 天に届く塔などない
嘆け 嘆け
傍観者共よ 求める永遠などない
残せ 残せ
無知な女よ 筺に希望など残ってはいまい







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ゲームの様だとは思わないか
まわりつづけるこの小さく大きな世界は






否や、と首のない鳥は笑った










ざわめく喧騒というものは、耳に心地良い物ではない。
下卑た笑い声や媚びる女の甘ったるい声、感情のままに怒鳴り散らす声に、自分を哀れんで沈む声。
色んな色をもつそれらが混ざり合ってできる色は何か?
答えなど考える暇もない。

黒だ。


限りなく濁って、限りなく世界の裏側に似た色をしている。



「・・・飽きもせずによくこうも毎日」




それに埋もれた私の声とて、容易く黒へ変じてゆく。その様があまりに見事で、思わず感嘆混じりに肩を竦めた。


抽象的な話をしよう。
白い何かと黒い何かがあったとする。
それらは相容れないものではなかったが、相容れてはいけないものだった。
けれど惹かれ会う。白は黒に。黒は白に。禁じられているが故に必然なのだと、誰に仕組まれるまでもなく。
そして交わる。交わって、解け合う。それは厄災をもたらした。たった二人の手によって開けられた、彼の筺の如く。
さて、その交わって解け合ったものは、一体何と呼べるのか。


とん、と肩を叩かれた。
背後の気配に視線をやる前に、左腕の腕時計をちらと見る。

「・・・二分三十七秒の遅刻だ、アキ」
「僕の時計ではぴったりだよ、サク」

名字から取ったのだろう私の呼び名に相手が誰かを確信する。
ふん、と鼻を鳴らすと漸く振り返る。何時も通り胡散臭さが全面にでている出で立ちには、もう慣れた。

「私の中の時間はコレだ。つまり君の時間がどうであれ、私は真実二分と三十七秒待たされた。」
「屁理屈、っていいたいけど、強ち間違ってもいないその考え、微妙すぎて謝るか反論するか迷うんだよ」
「分かってやっている。」
「うわ、確信犯。その内警察に捕まっちゃうよ?」
「それは私の台詞だ、アキ」



皮肉と嫌味の応酬は最早挨拶代わり。頭の回転が速い人間としか交わせないテンポいいそれは、私にとって好ましい。正に打てば響く、そんな形容詞でもつけてやろうかという程には。



「今日はどったの、アンタがいきなり場所指定してくるなんて珍しいじゃん」
「・・・いい加減、派手に狼煙でも上げてみようかと思ったまでだ」


狼煙。この隠語が示すのは、


「へえ・・・?戦いをおっぱじめようって訳」


戦いの宣言。力の誇示。



「まあ、何も殺し合いをするような野蛮な戦いにはならないだろう。」


何故なら、


「その前に跡形もなく、抗うことすら考えられないほどにたたきつぶしてやる」


いっそ慈悲とすら言えぬ強さ故の傲慢。
それでいいさ。
例え悪魔と、そう泣きながら罵られようと。

誰の命も絶えさせることのない、戦とも言えぬ戦いを、望む。


「偽善者とも呼べないね、独りよがりとさえ言えない。・・・悲しすぎるよ、そんな偽悪者な独裁者」


アキは常人の言う生温い優しさなんて欠片ももってはいないが、どこか甘い。
どんなに付き合いが長いと言っても、所詮私は他人。何も心を痛める必要などないだろうに。


「そうだな。だがそれが、私の救いだ」


戒めろ。罰を下せ。償いきれないのならば同じ痛みを。
我ながら惨めで馬鹿馬鹿しい罪悪感。だが、私以外の全員がそれを自己犠牲と口を揃えたとしても、私が救いだというのならそれは等しく救いなのだ。


「・・・・うん、精々アンタが寂しくて死なないように、僕は一緒にやってやるよ、その派手な祭り」


私は耳の長い小動物ではないのだが、と言い返そうとして合わさった視線に、瞳に眉を下げた。
諌められた瞳に浮かぶのは同情か憐憫か、気の迷いか。弱さと言い切ってしまえばそれまでの、小さな綻び。


けれどそういう感情は人らしいだろう。だから、必要なものだ。

気付かないふりをして言葉を吐く。


「ああ、頼むよ共犯者」


ニヤリと片頬で笑んだ私に、返される不敵な笑み。



世界に二人きりで喧嘩を売ろう。


終焉を目前とした街は、静かに蠢いた。




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空の柩に葬る花々
あの子は死にました
薄い仮面の下で笑いながら
自分の墓を見下した





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人は繰り返す生き物だ。
何千回繰り返して何千回悔いても
それは変わらないこと。




嗚呼、馬鹿らしい。









生きたいのか、生きたくないのか。
はっきりしないな、最近の人間は。

朝。眩しくて白い朝日をカーテンで遮りつつ、机の上に置かれた書き置きと新聞を見下ろす。

『ごめん、今日から一週間ぐらい家の仕事があって帰れない。』

丁寧で少し細長い字体は見慣れた雲英のものだ。
相変わらず縛られてるのか縋りついているか判別つかないな、君は。煩わしさや束縛感もあるだろうにいつまでも捨てられないのは居場所がひとつ減るからか。はたまた親族に今更な情でも感じる様になったのか。

「人間は難しいな」

ずっと生きている様を見てきたのに、答えを導き出さずにその真意を知ることは容易ではないものなんて他にない。

ああ、でも


「そろそろ潮時だ、雲英」

回答者が頭の中で告げる終焉はそう遠くない。

君は頑張った。
時の流れが止まらぬのは理だ。
衰退していくものを引き止めることなど君には出来ない。
終わりと最早結びついてしまったものを戻すことなど、人には出来ない。

「足掻くのは失望したいからか、?」

自分は頑張った。やれることは施した。終わってしまったのは、何も自分の所為ではない。
そう言う為か。周りの失望という重いものを背負わないために、自分の失望だけを背負うことを選ぶか。
利口で利己で加虐的だ。一番無難で、楽な。

雲英はそういう人間だ。何度繰り返しても変わらぬ本質。
とうに擦り切れてしまってもいいだろうに。

生けど死ねど、まるで変わらぬ。


冷め切ったコーヒーを口に含んで、紙面で大々的に書かれた文字をなぞる。

“高校生の自殺相次ぐ。遺書に書かれた真相とは”
“中高生の自殺増加。専門家が語る原因”


自らを殺すことは立派な殺人だ。
この平穏でぬくぬくと生きているからには、決して誰一人悲しまない死など無いだろうに。
周りの気持ちなど知らぬフリで悲劇を演じる。自分だけを憐れみ、陶酔する。

気味の悪い死だ。下らない死だ。

生きようにも生きられぬ人間だとているだろうに、生きていることが既に幸せだというのに。

その幸せを自ら放すことに何の意義があるのか。

死にたければ死ねばいい。

それで誰も悲しまず誰も怒らず誰にも迷惑をかけず、

ひとりで誰にも知られないまま死んでゆけ。


自分から死ぬというのならそれが道理だ。

「死というのは最後の安寧だ。誰にでも等しく訪れる、唯一」

誕生した時を仮にスタートと例えるのなら、ゴールは死。
苦しみも悲しみも痛みも、ない。それ故に喜びも温もりもないが。
死ぬことで遮断される。前者を感じすぎて擦り切れた魂が、一時的に救われる。

そしてまた繰り返す。

環状の輪廻。
循環する魂。


同じような性質をもち同じような感情をもち同じような人生を歩み、同じような終焉を迎える。


それが綴られてゆく永遠。
変わらぬ運命。



私が今ふとベランダに出て吹いた風に身を任せ死んだとしても、

それは小さな回り道にしかならない。

抗いにさえとらえられない。


「・・・無力だ、私達は」



何を思い何を感じ何を決めようとも
匙を投げたものの意のままにしか動けない、壇上のマリオネット。

壇上から降りられもせずに、見えない糸の導くまま生きていく。


「誰か・・・・、誰、か」


どうか断ち切ってくれ。
どうか抗ってくれ。


この糸を。廻り続ける魂を。願うしかないこの無駄な望みを。


どうか。


「助けて・・・・」



ああ、届かぬ。










消え行く彼女の悲鳴に、ひたり
誰かが嗤う









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ひたり ひたり
聞こえる死の足音にそっと微笑む
「待ちくたびれたよ」なんて
嘯いたまま








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この物語が終わる日など来るのか
繰り返されるばかりの悪夢に慟哭したあの日
その問いを受けた誰かは鈍くわらった。

終わらないさ。始まり続けるだけだ。






嗚呼、厭わしや











君が君たりえるその根拠は何だ。
姿形か、人格か、記憶か、魂か。

「なあ、教師。質問してもいいか」

カチャカチャと忙しない音を立てながら乱雑に実験の器具を片付けていた教師の背中が傍目から見て分かるほど大仰に撥ねた。その大袈裟な反応に呆れ半分からかい半分の大きな溜息を吐くと、振り向いた教師が手癖なのか黒縁の眼鏡を右手で上げる。

「朔葉・・!?おまっ、なんでこんなところに・・・」

「習うことのない教師に少し役立って貰おうと思ってな」

片付けにも飽きていた様だし、構わないだろう?南賀 亮太。

「教師を呼び捨てにすんな!いっくら俺より頭いいからって、年上への敬意をちゃんと表せ!上辺だけでも」

「おや、とうとう私よりも知識がないことは認めた様でなにより。最後の一言は教師としてどうかと思うがな」

上辺だけでも、なんて本音が駄々漏れではないか。やはりこの教師にはどこか考え無しに行動を起こすところがあって危なっかしい。見ているこちらがハラハラさせられる。

まあ、心配してやる義理などないのだが。

「で?・・・天才で既に教師をこえるレベルの知識を持つと噂の朔葉さんは、しがない新米教師の俺に何の質問をしたいんだ?」
す、と息を一つ。

「――――君が君たりえる理由は、何だ」

「はあ?・・・・そりゃまたえらく哲学的で堂々巡り必須そうな質問だなあ。俺が俺たりえる理由、なんてのは」

眉を寄せて怠そうに肩を竦める。そういう仕草は何故か達観していて、子供ぶってる目の前の男は、きっと幾つもある仮面の内の一つを晒しているに過ぎないのだと思う。
何をそんなに隠したいのか、なんて聞くまでもなく。

「姿か、人格か、記憶か。・・・魂、か?」

催促するべく投げかけた呟きは一見して馬鹿らしい。

「魂ぃ?・・・んなモンがあるとしたら、俺は怖くて外に出れねーがな」

「・・・怖い?」

「だってそうだろ?前世に殺し合った仲のヤツと擦れ違うかもしれないし、そのまた前世で愛し合ったヤツを殺すかもしれねえ、なんて恐ろしい可能性ばっかりな世界、俺には怖い以外の何物でもねえな」

知らない自分が内にいる様で、とは言わなかった教師。だがその微妙な表情の差異は如実にその後付けを表している。

「そうか。結局のところ、君は『俺は俺以外の何者でもねえよ』とでも答えるんだろうな。」

分かってるならわざわざ答えさせるなよ、とでも言いたそうな表情を一瞥し、暫く沈黙。
求めていた答えなどないから、別に構わない。ただ上手く纏まりすぎて綺麗事めいていると思うだけで。
やはり何か、何処か、明け透けて醜い。

「んで?・・・お前の答えは何なんだ?・・・俺だけに聞いておいて言わない、なんて無しだろ?」

右手に持っていた試験官を卓上に置いて私に向き合った教師の表情は相変わらず作り物だ。
人形を相手にしているかのように錯覚するな、と独りごちて寄りかかったドアから身体を離す。

「そうだな。・・・・私が私たりえる所以は記憶、だ」

あっさりとした予想外の答えに教師が思わず仮面を被ることも忘れて目を白黒させるのを尻目に、そっと理科準備室を後にした。

「私の帰結するところはやはり役を担う記憶なのだよ、結局のところ」

些細な呟きは放課後の喧騒に埋もれて響かない。だからこそ唇に笑みを浮かべる。
―――――縛られ壊され殺されたとて、【役】に勝る意義はなし。
どうせ環状巡りのこの問いに、私が答えたい答えが出せる時など来ないだろうが。


それでも繰り返すのが人の性。



変わらぬと知っていながら、また頁を繰るのだ。

今日もまた。




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行けど戻れど先は明白
固められた虚像の劇を見下ろして嗤う
神様とやらはイカレてる







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喜劇などない。
昔話もお伽噺も、所詮壇上での足掻き。
そんな私を見下ろして
きっと誰かは嘲笑う





嗚呼、狂おしや










昔、本当に昔。
繰り返すことに絶望していなかった頃の私は、青い鳥が欲しいと願った。硝子の靴が欲しいと望んだ。
幸せの形。幸せの依り代。お伽噺の中の幸せを、この手に。
今思えばその時の私は幸せだったのだろう。幸せを欲しいと望めるのは知らずに幸せを手にしている人間だから。

「おはようございます、翡翠葛の君」

「・・・おはよう」

さざめく雑音に混じる媚び。何時の間にか付けられた二つ名は翡翠葛。私の瞳の色を指してのことだろうが、花にたとえられるのはあまり好まない。
上辺の形など所詮薄皮一枚で出来た脆いもの。いつかは朽ちるその美しさとやらをどんなに褒め称えられたとて、誇るべきものではないのだから反応に困る。

私の通うこの私立彩尭高等学校は、国で五指に入るほどの進学校だからか、勉学に励む変わりに規則が緩い。
一見して優等生じみた装いの生徒の方が稀だ。大抵親の拘束を嫌って自由な校風を好むお嬢様お坊ちゃまか、頭はいいけれど普通の高校では面接でおとされるだろうと予想できる不良やギャル、そういった面々でそれぞれほぼ半分を占める。

かく言う私は、保護者が雲英というだけあって、どちらかと言えば“お嬢様”の部類に入るだろう。

入学して半年ほど経ったころからか。私の二つ名が広まったのは。
他人に干渉されることがあまり好きではなく、ましてや深く付き合ったが故の面倒事に巻き込まれるなどもってのほか。そういう雰囲気も理由の一因ではあっただろう。
私は学校の中で浮いていた。いじめや嫌がらせではなく、どちらかといえば敬遠状態だろう。

当たり前といえば当たり前な学力も身体能力も、そういうものに頓着しない態度も思春期真っ盛りな男女から見れば憧れだったのかもしれない。

いつしか私は“翡翠葛の君”という大層な名前のついた高嶺の花となった。

過去に傷を持っているから周りを不幸にしないために遠ざけ、夜は月を見て誰かを思って泣く。

そんなありきたりな悲劇のヒロインの設定らしい。最初にそれを聞いた時はあまりに薄っぺらくて馬鹿らしくて笑い転げてしまった。何だ、それは。


何を知っているのだろう。何を分かっているつもりでいるのだろう。
学友はいつの間にか私にとっての“外野”となりはてた。マトモに話すのは要嵐くらいなものだから、尚のこと私と彼のことを騒ぎ立てて煩わしい。


平穏で幸せで、少し退屈な日常の中の変わり者。
どんなに囃し立てて口々に賞賛する彼女達にとって所詮私は、そういうもの。



「下らないな」


ああ、早くこんな世など終わってしまえ。
こんな、私でも幸せになれると錯覚しそうな世など。


「なーにが下らないの?斎ちゃん」


そして君は、何故こうもタイミング悪く登場するのだろうか。
もしや盗聴器を私の制服に忍ばせているのか?不覚だ。何処にそんなものが・・・

「いやいや、盗聴器は流石に俺でもつけないから。斎ちゃんの中での俺って何なのさ」

「変態。色情狂。ストーカー。女好き。快楽主義者。・・・・流石に、ということはそれに準ずるものはあるのか?流石だな、破廉恥大魔王め」

盗聴器よりはレベルの低いもの・・・何だ、GPSか。最近は極小のものも商業用として売り出されているからな、簡単に手に入るだろう。

「ないから!っていうか破廉恥大魔王って何その不本意極まりないあだ名!せめてダーリンとか旦那様とかご主人様とかさあ・・・あ、お兄ちゃんでもいい!ね、斎ちゃん要嵐お兄ちゃんって言って? Repeat after me!」


無駄な所で発音がネイティブだな。そういうのを無駄頭脳というんだ。

「黙れ変質者。私にはそのような破廉恥な兄などいない。寧ろいたらすぐに縁を切る。だから安心して刑務所にお世話になれ。」

だが悪くない。
君とのこういう下らない話をするのは、嫌いではない。

「もう刑務所にお世話になる段階の変質者なんだね!?斎ちゃんの中での俺って」

嫌いでは、ないんだ。

「当たり前だ。私にすれば捕まっていないことの方が不思議でたまらない」

だから、こんな日が続けばいいと叶わない夢を見る。






分かっていたはずだ。
望んでしまえば失うことくらい。


なあ、要嵐
君は今何処にいる







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Author:雪柳 雪藍
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